昭和町立図書館開館35周年を記念して、令和6年12月17日から2025年5月15日まで募集いたしました「図書館・書店・本とのちょっといい話大賞」ですが、沢山のご応募を本当にありがとうございました。
厳選な審査の結果、受賞作品が決定いたしましたので、お知らせいたします。
私は本を読むことが大好きです。小さい頃から夜ねる前にお母さんが必ず本を読んでくれました。自分で読めるようになった今でも少しむずかしい本は読んでもらいます。
お母さんは働いていて私はおばあちゃんの家で帰りを待ちます。お母さんとすごす時間は多くはないけれど、夜の読書タイムは私とお母さんだけの特別で大切な時間です。お母さんの読み方は登場人物になりきって声を変え、まるで本の中の世界へ連れて行ってくれるようです。「次はどうなるんだろう」と想像してページをめくるのが楽しくなります。小さい頃はオーバーな表現がとても面白かったけれど今は「少しやりすぎだな」と思いながら聞いています。眠れない時は電気を消してからも私の知らない物語を話してくれます。私はそんなお母さんとの読書タイムが大好きです。これからも二人の時間を大切にし、大好きな本を沢山読んで色々な世界を知りたいです。
父は文学青年だったとか。書棚には新聞小説を製本した『新・水滸伝』や神田の古本屋で購入した『新・平家物語』など歴史小説が並んでいる。毎年発表になる芥川賞・直木賞の作品は必ず読んでいるし、その作家たちにも詳しい。『蝉しぐれ』について尋ねたらあらすじをすぐに答えた。「TVドラマになったときには見入ってしまった。」とも話した。
そんな父だから、住んでいる町に図書館ができたことを喜んでいた。これからは好きな本を好きなだけ読めると。図書館へは町からいただいた図書館バックを持っていった。バックを長年大切に使い、いつも借りた本を数冊入れていた。館内では、拡大鏡を持参して新聞各紙や雑誌も読んでいた。拡大鏡を忘れたときには、職員さんが図書館のものを貸してくださった。開館当初から足繁く通う父を知っているからこその配慮だったと思う。
父は2022年に95歳で亡くなった。父のデスクマットには、今でも図書館利用カードが入っている。
私が小学生の頃、1人で買い物やお金の勘定ができるようになるための練習を家の近所の書店で行っていました。その頃から文庫や漫画が好きだった私は頻繁に書店へ通っていました。その書店の店員さんは時間や曜日で変化していましたが、ある時いつも書店で働いている店員さんに気が付きました。その時から書店に行く度に「今日もいるなぁ」と考えるようになりました。そんなある日、「本を買うのも慣れたな」と思って支払いをすると、その店員さんに「10円足りないよ」と言われ、1冊返そうとした時に「いつも来てくれてありがとう」という言葉と共に10円を財布から取り出しお会計をしてくれました。この時私は感謝の気持ちでいっぱいでした。その後、10円を返しに行ったときも優しく対応してくました。私はこのとき「人に真摯に対応する」ことの重要さを理解し同時に、じんわりと心が暖まりました。私は今もその書店へ通い、店員さんを見る度にこの出来事を思い出して微笑んでしまいます。
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